【小額投資のすゝめ】時は金なりー100円を制する者が投資を制するー

地中の100円から芽が出ている

非正規、手取り20万で投資開始。300万貯められなかった私が『なくなってもいいお金』と7年向き合って300万円投資出来た話。

神社に祈りと共に投げる100円。 仕事前、気合いを入れるために買うカフェラテの500円。数百円で出来る気分転換は、時として心の栄養になったり私に活力を与えてくれる。
けれど私は知ってしまった。その”何気なく消えていく数百円”の少額が、人生を変える働きをすることを。

もちろん、億り人には程遠い。それでも——宵越しの銭は持たない主義だった私にとって、「消えたはずの100円」をしぶとく7年投じることができたのには今となっては理由があった。思い付きのような始まりが投資の土台になるとはつゆとも思っていなかった。

この記事でいう「少額」とは、なくなっても困らない金額のこと。飲み会一回、スイーツ一個、なくなっても気にならない、そのくらいの感覚で忘れられる金額と定義する。人によってきっとその金額は違う。その自分が失っても痛くない金額をいかに現実的に落とし込めるかが、少額投資の成功のカギを握ると言っても過言ではない。

私にとっては3,000円くらいがちょっと良いランチ1回と思ってあきらめのつく金額だ。あれから7年、収入は変わったが、この感覚はいまだに変わっていない。

皆さんにとっての「少額」は、いくらだろう?

本記事の内容は経験に基づいた情報提供と、過去の値動きを基に算出した模擬計算である。特定の銘柄の売買の推奨や勧誘目的ではないことを明記しておく。また過去データは未来を保証するものではなく、投資には元本割れのリスクがつきものである。投資判断も自分の人生も、判断と責任は常に自分にあると肝に銘じていただきたい。

時間と利率は、100円にも平等にかかってくる

少額投資なんか意味ないって思ってる?もちろん最終的に入金額がものをいう世界だということは否定しない。

しかし、少額だからと侮るなかれ。大金の方がもちろん雪だるまは多くの雪をつけて膨らむ。しかし少額だとつかないのか?と言えば、ここはちょっと見方に変化をつけると資本主義の本質に少額でも十分に触れることができる。

大きな雪玉でも小さい雪玉でも、同じファンドを同じ買い方をすれば、時間と比率は同じように効く。当たり前と思うかもしれないが、少額投資を甘く見ている人ほどここがきちんと見えていなかったりする。私自身、投資を始めてから一番変わった感覚がここかもしれない。

なぜか。1万円が2万円になっても大した金額ではないとバカにするのは簡単だ。しかし、ここであえて聞く。

ではあなたが寝ている間に、そのお財布の中の10,000円は妖精が出てきて2枚にしてくれるだろうか?

銀行預金の金利は今や0.001%前後。100万円を1年預けてもリターンは10円にも満たない。一方、インデックス投資の長期平均リターンは年7%前後と言われている。つまり10年で倍になる計算だ。

貯金は「守り」だ。でも投資は「育成」だ。そして育成のルールは、100円でも100万円でも変わらない。時間と利率は、あなたのお金の大小に関係なく、平等にかかってくる。

もう少し踏み込んで言うと、投資とは「貸し出し」だ。あなたの100円を、世界の経済活動に貸してあげる。企業はそのお金で動き、成長し、利益を出す。そしてその一部が、あなたに返ってくる。時給労働は自分の時間を切り売りする行為だ。でも投資は、お金に働いてもらう行為だ。あなたが寝ている間も、休んでいる間も、お金は黙って仕事をしている。

そしてもう一つ。増えた分は小さい雪だるまにはならない。元の雪だるまが少しずつ大きくなる。時間が長くなると、雪だるまは何故か一人で自分を大きくするために動き始める。これが時間を味方につけることの本質だ。

100円じゃ増えないのではない。100円でも倍にはなるのだ。

「300万貯めてから始めなさい」——その根拠はいずこ?

投資の話をすると必ず出てくる言葉がある。「まず生活防衛費を貯めてから」「余裕資金ができてから」「300万準備してから」。言いたいことはわかる。でもその根拠を、きちんと考えてみたことはあるだろうか。

そもそも「300万」という数字はどこから来たのか。誰かが言い始めて、いつの間にか常識になっている。一般的に生活防衛費とは、最低生活費の3〜6ヶ月分と言われている。私の場合、派遣時代の最低生活費は月13〜15万円だった。つまり本当に必要な生活防衛費は39〜90万円。私の場合は300万である必要は必ずしもなかった。

「でも急な入院や病気は怖い」——その不安はわかる。だから数字で確認してみよう。

日本には社会保険がある。たとえば病気で20日間入院した場合(年収285万・協会けんぽ加入)、自己負担はどのくらいか。医療費本体は高額療養費制度が適用され、この収入帯では月の上限が57,600円。食事代が約12,000円、日用品など実費が1〜2万円。合計しても約8〜9万円だ。さらに休業4日目からは傷病手当金が支給される。給与の約2/3、20日入院(待期3日除く17日分)なら約93,500円が入ってくる。

家賃やその他の生活費も必要なので、入院費のみまかなえればいいという話ではないが、手元に10万円あればお釣りがくるレベルだ。傷病手当は数ヶ月後の支給になるため一時的な立替は必要だが、「万が一」のために300万の現金を塩漬けにする必要性については改めて検討してもよいのではないだろうか。

そもそもの話になるが、生活防衛費は現金でなければならないのだろうか。

入院・手術の支払いはほとんどの病院が後日振込だ。家の購入など大きな出費も、事前にわかるから準備の時間は十分ある。投資信託は長期休暇や祝日を除けば最長1週間程度で換金できる。つまり「1週間待てない緊急事態」はほぼない。5年以内に使う予定のないお金なら、全額現金で寝かせず、投資に回すという選択肢もある。全額投資に回せという極端な話ではない。しかし選択肢は一つだけなのだろうか。

もちろん300万あるに越したことはない。でも「300万貯まるまで投資は待て」という話と「300万はいつか貯まればいい」という話は、全然違う。

貯めてから始めるって、本当に最適解?——資金が少ないからこそ、欲張りたい

世間のセオリーは「300万貯めてから投資を始めろ」だ。それを真っ向から否定するつもりはない。でも私の収入で、そのセオリーは許容しがたかった。

2019年、当時の私は300万円貯める手から始めてから投資することは早々に諦めて、その代わり『なくなってもいい金額』これに賭けた。

しかし、もし今の私がタイムスリップして2019年の自分に言えるとしたら、こう言う。「貯める期間を少し伸ばして、同時に投資を始めろ」と。

月3万円貯蓄できる人が全額貯金すると、300万貯まるのに**100ヶ月(約8年4ヶ月)**かかる。その間、投資はゼロだ。

では月2万を貯金、1万を投資に回したら?現金300万が貯まるのは150ヶ月(約12年6ヶ月)と、4年余分にかかる。でもその時点で投資は年利7%で運用され、約307万円になっている。現金300万と合わせると合計約607万円だ。

さらにこう比べてみよう。パターンAの人が8年4ヶ月後から投資を始め、同じ12年6ヶ月の時点ではどうなっているか。投資期間はわずか4年2ヶ月(50ヶ月)。月3万を投資に回しても約204万円。現金300万と合わせて約504万円だ。

同じ12年6ヶ月で、約100万円の差が生まれる。

パターンA:
全額貯金→投資開始
パターンB:
貯金と投資を同時に
現金300万円300万円
投資約204万円約307万円
合計約504万円約607万円

時間はかかる。現金が300万貯まるのは4年遅くなる。でもこの方法なら、投資経験と生活防衛費の300万、両方を手に入れられる。

貯金は後からでも増やせる。でも時間は戻らない。資金が少ないからこそ、私なら欲張りたい。


旧NISA(楽天証券)実録——100均の植物を育てる気分で

私が投資を最初に始めたのは2019年6月、旧NISAの制度だった。きっかけは生活保護から抜けたタイミング。自立記念的な意味と、復権的な感覚だったように記憶している。

当時は時給1,700円、1日7時間の派遣社員。年収285万、手取りは20万を切ることもあった。2人の子どもを育てながら急な欠勤も多く、生活は楽ではなかった。投資に対するうさん臭さも拭えなかった。

でも思ったのだ。今より落ちることはないし、失敗しても「貧しいから貧しい」になるだけだ。もしうまくいけば、ちょっと余裕ができるかもしれない——そんな軽い賭けだった。

本を1冊買って自分なりに理解したのは3つ。①長期運用すると銀行預金より数倍増えるらしい。②手数料は安いものを選ぶ。③定額積立×分散が大事。どれも何となく納得できた。

そこで考えた作戦が「なくなってもいいお金を投資に回す」こと。コンビニコーヒー代でVTIを買う。スイーツ1回我慢して世界経済の成長に賭ける。

楽天VTIを毎日100円、たわら先進国株式・iFree S&P500・三井住友日本株インデックス・eMAXIS日経225・iFree 8資産バランス・フィデリティ欧州株を毎月100円ずつ積み立てた。月間の投資額は3,000円弱。銘柄選びの基準は「なんとなく響きが好き♪」くらいの軽さだった(笑)

感覚としては、100均の植物コーナーでなんとなく可愛くて買ってきた、種類別の観葉植物を育てている気分だった。最初は何も考えずに並べておく。でも育てているうちに、これは冬に弱いとか、日当たりが必要とか、水をやりすぎると根腐れするとか、自然と体で覚えていく。銘柄も同じで、眺めているうちに値動きのクセが少しずつ見えてくる。

結果として、これは実験であり分散でもあった。銘柄の具体的な選び方や分散の考え方については別記事にまとめる予定である。興味があればそちらも読んでみてほしい。

少額でプロスペクト理論を体験する——自分という投資家を知る期間

積立を開始して数ヶ月後、コロナの影響でほぼ全銘柄マイナスになった。

でも「なくなってもいいお金」と決めていたから、放置した。少額だったから、心の機微に触れずに冷静でいられた。運用利率の上下の感覚を、波形として冷淡に見ていられた。これがラッキーの1つ目だ。

これは後から知ったことだが、行動経済学に「プロスペクト理論」という考え方がある。雑に言えば、人間の脳は利益の喜びより損失の痛みを2倍以上強く感じる、というものだ。100万円が110万円になっても「たった10万か」となる。しかし100万円が90万円になると「投資なんかやる意味ない!」と感じる。これが損失回避性だ。

私はこれを、図らずも回避していた。少額だったから冷静でいられた。そして2つ目のラッキー。スケールした後に投資記事や本で「こういう心理が働く」と読んだとき、「あ、私はこうなりやすい・ここは大丈夫だった」と自分の体験と照合できた。知識としてだけでなく、実感として持っている。相場がどう動くかは誰にもわからない。でも自分がどう動きやすいか、どう感じやすいかも、やるまで誰にもわからない。少額でそれを知っておくことが、額を大きくした時の盤石な心の支えになる。

今ならわかる。評価益が60万円あって20万円減ったら、ただの数字の浮き沈みなのに少し焦る。でも最初の少額の体験が、そのメンタルの土台を作ってくれた。

ここで参照点の話をしたい。参照点とは、自分がどこを基準に物事を判断するか、ということだ。一番よろしくないのは、SNSでキラキラしている人たちと自分の差を図ることだ。誰かを見返すことが目的になると、参照点は常に「他人」になる。それでは永遠に満たされない。

大事なのは今の自分がちょっとでも良くなれること。参照点は常に今の自分、そして今よりちょっと良い未来を目指す。その積み重ねがいつか大きな力になる。それも私が投資から学んだことだ。

最初の参照点は生活保護だった。投資ができること自体、すでに上振れだった。だから下落しても「ここから始まってるんだから」と思えた。300万になった今も、3,000円の感覚は変わらない。でも目的は変わった。「もしかしたら増えるかも」から、「未来が少し良くなる種まきをしている」へ。

プロスペクト理論をスルーしている間に、相場感が身についていた。コロナの暴落、地政学リスクによる乱高下——少額だから放置できて、放置しているうちに「相場とはこういうものか」と体で覚えた。練習のつもりで雇ったら、ちゃんと働くプロだった。素人の私にも100円は本気で働いてくれた。

育った話——5,000円が仲間を連れて帰ってきた

月100円ずつ積み立てたファンドの原資は約5,000円弱。それが今、評価益の少ないものでも2,500円以上の運用益を生んでいる。成績のいいファンドは原資より運用益の方が大きくなっている。使っていたら消えていた5,000円が、増えて戻ってきた。※毎月のサマリーを公開しています。興味がある方はどうぞ。

私の転機はVTIの含み益が75%を超えたころだった。ギャンブラーが「倍にして返してやる」と言うあの世界が、本当に存在すると知った。使ったら消えていたお金が、寝ている間に働いて倍になろうとしていた。

投資信託は、人間のように裏切らない。感情もなければ、サボることもない。友達に5,000円貸して7年後に7,500円にして返せと言ったらきっと嫌な顔をされるか、返ってくることはないだろう。しかし、インデックス投資というやつは、それを当たり前の顔をしてやってのける。とても律儀なパートナーだ。7年前に貸した100円は、仲間を連れて帰ってきた。

そしてここで気づいた。5,000円が2,000円連れてきてくれるなら、原資100万円ならいくら連れてきてくれるんだろう。500万円なら?計算すると、理論上1,000万円になる可能性がある。

こりゃ貯金して使い切ってる場合じゃない。タネを撒かなきゃ。

これがスケールへの動機だ。投資額は一気に大きくなった。誰かに言われたからじゃない。自分で計算して、自分で気づいた。少額で体感したからこそ、数字がリアルに感じられた。入金額に関しては、派遣から正社員になったラッキーはあった。でも最初の100円がなければ、そのラッキーを乗せる器もなかった。

まとめ:タネは、今日撒ける

2019年から細々と続けている旧NISA(楽天証券)の投資は、7年目に突入しようとしている。原資は16万円、運用益も16万円になった。※2026年5月時点

今となったら16万円は、新NISA(SBI証券)の約2ヶ月分の投資額とさほど変わらない。16万円増えても生活費にはならない。それはそうだ。金額で見たらそう思う人もいるだろう。でも重要なのはそこじゃない。大事なことは先月と今月積んだ14万円は、14万円を連れてきてはくれないということだ。あの7年間の100円たちがいたから追加の16万円がある、時間という名の利子だ。

投資を始めてから、100円との向き合い方が変わった。使う時はすっぱり使う。でも使わなくていい100円があれば、迷わず投資に回す。100円がお友達を連れて帰ってきてくれる方に賭ける。100円の置き場所を変えることが、自分の24時間の檻を少しずつ広げる手段だと知ったから。

時給で働いていると、1日の時間の制限は24時間。1時間削って、1時間分稼ぐ。その繰り返し。投資しても働いても1時間が変わるわけではない。しかし自分が寝ている間にも投資したお金は働いてくれる。

もしこれを読んで始めてみようと思ったらネット証券で口座開設から始めて見るのが良いだろう。特定口座では利益に約20%の税金がかかるが、NISA口座なら儲けは非課税になる。制度の詳細は証券会社の説明が一番丁寧なので、そちらを参照してほしい。

そして買う商品に迷ったらはオルカン、SP500、VTI、王道と呼ばれるものを比較してみるのをお勧めする。個人的には悩むくらいなら全部買ったらいいと思っている。そして始めたら5年は止めない。不安なら見ないほうがいい。これさえできればよほど世界情勢が過去相場とかけ離れた動きをしない限りは少なからず資本主義の恩恵にあずかることができるだろう。

5年やってみて意味ないと思ったらやめればいい。月500円を60ヶ月。30,000円+αは残っているはずだ。そのαを見ても興味がわかなければ投資は必要ないのかもしれない。気軽にお試しできるという意味でも少額投資は便利だ。

貯金は守り。投資は育成。タネは今日からでも撒ける。たくさんである必要はない。むしろ最初こそなくなってもいい金額で相場や自分と向き合うことで自分の投資スタイルが見えてくる。

投資は、お金持ちだけの特権ではない。未来の自分に宛てて、今日からできる「一番誠実な仕送り」だ。

100円でお友達(利子)を連れてきてもらうか、それともただ消えていくのを眺めるか。答えはもう、あなたの中に。 タネは、今日からでも撒ける。

――時は金なり。100円を制する者が、きっと未来を制するのだ。

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